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「多対多の細胞間相互作用を捉える新手法『scTensor』を開発

  • admin
  • 2023年11月7日
  • 読了時間: 2分

近年、単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq)の発展により、細胞間相互作用(cell–cell interactions: CCIs)の網羅的解析が可能になりましたが、従来の手法では細胞型間の「1対1」相互作用を仮定しているものが多く、実際に観測される「多対多」の複雑な相互作用の検出には限界がありました。今回、RIKEN BDRの露崎さん、二階堂らの研究チームは、多対多CCIsを高精度に抽出できる新手法「scTensor」を開発し、その成果がBMC Bioinformatics誌に掲載されました。


scTensorは、リガンド発現・レセプター発現・遺伝子ペアの三者関係をテンソル(3次元配列)構造で表現し、非負値Tucker分解(NTD-2)によって高次元の細胞間相互作用を抽出するアルゴリズムです。既存手法では失われがちな「どのリガンド–レセプター対が、どの細胞型間の相互作用に関与しているか」といった情報を保持したまま、相互作用のパターンを網羅的に解析できます。論文では、90種類のシミュレーションデータセットと5つの実データセットによりscTensorの性能を徹底検証しました。その結果、計算時間・メモリ効率でも他手法を上回り、特に多対多のCCIs検出において高い精度と再現性を示しました 。


scTensorはR/Bioconductorパッケージとして公開されており、125種以上の生物種に対応したL–Rデータベース(LRBase)や、HTMLレポート出力機能、GO/Reactome/MeSHによる生物学的解釈支援機能などが充実しています。また、バイオインフォマティクス研究チームは、scTensorの開発だけでなく、L–Rデータベースの半自動アップデートパイプライン(lrbase-workflow)や、テンソル演算の効率化を目指すDelayedTensorパッケージの開発など、持続可能なツール運用に向けた基盤整備も進めています。


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Department of Functional Genome Informatics, Division of Biological Data Science, Medical Research Laboratory (MRL), Institute of Integrated Research (IIR), Institute of Science Tokyo

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